Author:
佐野誠子 (Seiko Sano)
Publication date:
2020
Publisher:
名古屋大学出版会
Abstract:
歴史と宗教のあしもとで ——。「怪力乱神を語らぬ」儒教の国にあって、怪異はなぜ、いかにして記録されるようになったのか。『今昔物語集』等にも影響を与えた古代中国の「志怪」について、史書の伝統や仏教伝来との関係を軸に、社会的文脈から生成過程、文体まで、初めてトータルに捉え、中国人の精神のかたちを逆照射する。
Table of Contents:
凡 例
志怪年表
序 章 六朝志怪と怪異の歴史記録
1 怪を志す「小説」
2 「怪」とは何か
3 志怪はどのように位置づけられてきたのか
4 志怪のテキストについて
第Ⅰ部 史の伝統の中で
第1章 志怪の文脈
—— 歴史書の拡大と変異の記録
1 史と志怪
2 雑伝書
3 五行志
4 変異情報の伝達と編集
第2章 志怪の系譜
—— 五行志との関わりを手掛かりに
1 応劭『風俗通義』における災異と怪異 —— 志怪誕生の素地
2 干宝『捜神記』と五行志 —— 志怪の成立
3 南朝宋時代の変異記録の行方と志怪 — 『宋書』五行志と『異苑』を中心に
第3章 志怪の怪
1 廟 神
2 幽 鬼
第Ⅱ部 仏教を受け止めて
第4章 志怪における僧侶
—— 新たなる怪異との邂逅
1 仏教伝来と志怪への影響
2 僧侶と志怪
3 僧伝と志怪
第5章 仏教志怪の系譜
—— 応験記との関わりを手掛かりに
1 仏教志怪の誕生
2 『幽明録』『宣験記』と『冥祥記』—— その内容の違い
3 『繋観世音応験記』の構成と他の仏教志怪
4 応験譚の南北差 —— 佚名の文献資料を手掛かりに
5 応験記と志怪
第6章 冥界遊行の仏教化
1 僧侶の冥界遊行 —— 慧達劉薩荷を例に
2 僧侶の冥界遊行が作られた理由
3 『冥祥記』の僧侶と『高僧伝』の僧侶
終 章 中国「小説」史への吸収
1 実録という形式と態度
2 実録という形式を用いた虚構
3 唐代における二種類の「伝」と歴史からの離脱
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