Sunday, February 1, 2015

中国江南六朝の考古学研究

Author: 
藤井康隆

Publication Date: 
2014. 11

Publisher:
六一書房

Abstract:
3世紀から6世紀末にかけて、中国において諸民族が割拠し、同時に南北の地域社会が拮抗した、魏晋南北朝時代。この時代に長江流域以南を統治した江南六朝は、異民族に追われて中国古来の都が位置する中原の地を失った漢民族が樹立した政権である。しかし他方で、中国内外の文化や国際秩序に少なからぬ影響をもたらしていた。

本書では、南方社会の立場から、江南六朝が史上初めて南方に現れた「正統」の中国王朝であることに注目する。江南六朝は周辺の地にありながらどのようにして中国王朝たりえたのか、六朝文化における南方の在地性、そして南方社会の歴史的意義とはどのようなものか。近年急速に進む発掘調査と著者自身の現地調査の成果を踏まえ、南北の皇帝陵墓と金属工芸を考古学的に分析・比較し、南方社会の結実としての江南六朝の特徴を浮き上がらせる。

Table of Contents:
序 章 中国の南と北

第Ⅰ部 南北朝陵墓の世界
 はじめに
第1章 江南六朝の帝王陵墓
 はじめに
 第1節 東呉の帝陵と皇族墓
 第2節 東晋の帝陵
 第3節 南朝の帝陵と皇族墓
 第4節 江南六朝陵墓の特徴
第2章 華北中原の陵墓とその特徴
 第1節 曹魏・西晋の陵墓
 第2節 北魏の帝陵
 第3節 東魏・北斉の帝陵
 第4節 西魏・北周の帝陵
第3章 陵墓の外部空間
 第1節 江南六朝墓の墓室外空間の特徴
 第2節 南北の陵墓の外部空間
 小   結
第4章 東晋南北朝墓の墓室空間
 第1節 東晋南朝墓の墓室形式の問題点
 第2節 凸形墓の出現背景にかんする再検証
 第3節 墓室の性格と空間概念
 第4節 東晋南朝の墓室空間
 第5節 十六国北朝の墓主画像
 第6節 墓主をめぐる墓室空間の構造
 小   結

第Ⅱ部 晋式帯金具の研究
第5章 晋式帯金具の研究史
 第1節 「晋式帯金具」の発見と名称
 第2節 晋式帯金具の性格
 第3節 晋式帯金具の製作地と製作動向
 第4節 材質と古代科学技術史をめぐる論争
第6章 晋式帯金具の製作動向
 はじめに
 第1節 晋式帯金具の部分名称
 第2節 晋式帯金具の文様
 第3節 晋式帯金具の製作技術
 第4節 晋式帯金具の編年
 第5節 晋式帯金具の製作動向
 小   結
第7章 三燕の帯金具をめぐる問題
 はじめに
 第1節 中国東北部の帯金具概観
 第2節 三燕における帯金具の新例
 第3節 遼寧における帯金具の変遷
 小   結
第8章 晋式帯金具の造形意匠と思想規範
 はじめに
 第1節 新資料の紹介
 第2節 晋式帯金具における二つの様相
 第3節 晋式帯金具の受容と展開―遼寧の様相から
 第4節 晋式帯金具の思想的規範
 小   結
第9章 晋式帯金具の成立背景
 はじめに
 第1節 東呉薛秋墓の概要
 第2節 東呉薛秋墓出土帯金具の特徴
 第3節 東呉薛秋墓帯金具と晋式帯金具
 第4節 晋式帯金具の諸系統と製作動向
 第5節 晋式帯金具の拡散とその背景

第Ⅲ部 両晋南北朝の金属工芸
第10章 六朝の「龍」の造形について 
 はじめに
 第1節 六朝期の「龍」三例
 第2節 「龍」の図像の造形と表現
 第3節 「龍」の造形と文物の広がり
 小   結
第11章 5世紀の日本出土帯金具と中国
 第1節 5世紀の金属工芸と帯金具
 第2節 製作技法の概要
 第3節 5世紀における日本出土帯金具の製作地
 小   結
第12章 中国南朝前期の金属工芸
 第1節 六朝金属工芸にかんする問題の所在
 第2節 中国南朝前期の金工
 第3節 中国南朝前期の金工技術と生産
第13章 東晋南朝の金属工芸と十六国
 はじめに
 第1節 東晋南朝の金属工芸の動向
 第2節 晋式帯金具の展開
 第3節 文冠飾の模倣
 第4節 東晋の金属工芸の波及

結   語
ま と め
結論と課題




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