Monday, November 6, 2017

中国初期国家形成の考古学的研究:土器からのアプローチ

Author:
秦 小麗

Publisher:
六一書房

Publication Date:
August, 2017




Abstract:

中国初期国家の形成過程に関する従来の考古学的研究は、土器で設定した文化類型を、戦国時代以降の文献史料に示された夏や商(殷)王朝の活動範囲と結び付けて解釈することが多かった。著者はこの研究史上の問題点をふまえ、遺跡ごと・地域ごとの土器系統の分析により明らかになる複雑化した相互交流の実態にこそ初期国家の形成過程を分析するための鍵があるとし、数量的手法を用いた土器様式の分析を行う。土器の法量比較や土器表面に印された縄目数の計測は、日本考古学の手法を参考に実地の資料調査を積み重ねた著者ならではの着眼点で、日中の学会誌や国際学会においても高い評価を受けている。本書における著者の研究により、中国の国家形成期における複雑な地域間交流と、中央による地方の支配体制が二里頭時代から二里岡時代へと次第に強化されていくプロセスが、具体的に明らかになる。日本考古学の研究手法を随所に用いた本書は、単に中国考古学の研究書としてだけでなく、国家形成をめぐる日本考古学の方法論的な実践書として読んでいただけるだろう。

Table of Contents:

序文(岡村秀典)
はじめに

第1章 研究史
第1節 二里頭時代の研究史
第2節 二里岡時代の研究史
第3節 夏商考古研究の問題の所在と本書の視点
第2章 土器の型式分類と系統識別
第1節 土器型式の分類と型式の変化
第2節 中心地における各系統の起源

第3章 中心地における土器様式の変遷
第1節 二里頭遺跡の土器様式
第2節 鄭州商城遺跡の土器様式
第3節 偃師商城遺跡の土器様式
第4節 3遺跡間の比較

第4章 二里頭時代の地域動態
第1節 地域区分と編年
第2節 伊洛地区
第3節 山西省南西地区
第4節 河南省南西地区
第5節 鄭州周辺および河南省東部地区
第6節 河南省南部と長江中流域地区
小結

第5章 二里頭時代から二里岡時代への転換
第1節 鄭州・伊洛地区における複合遺跡の分析
第2節 河南省北部地区における複合遺跡の分析
第3節 山西省南西地区における複合遺跡の分析
第4節 考察
小結

第6章 二里岡時代の地域動態
第1節 伊洛・鄭州地区および河南省東部地区
第2節 河南省北部地区
第3節 山西省南西地区
第4節 長江中流域地区
第5節 考察

第7章 土器の地域動態と城郭遺跡の出現
第1節 土器の地域動態
第2節 土器様式変化の背景
第3節 中心と周辺
第4節 二里岡文化の成立過程

おわりに
あとがき
引用参考文献
図表出典
中国語要旨

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